マエストロ。エンポリオ アルマーニが2026-27年秋冬コレクション“Maestro”で描いたランウェイの舞台は、指揮者を目指す学生たちが集う音楽学校。道を究めた人への敬意とともに、自分の人生の指揮を自分の手で執ろうとする人の姿が、そこに重ねられている。
映画初主演作で新人賞を四つ獲り、いまは連続ドラマのヒロインを務める俳優・関水渚、28歳。その指揮は、撮影現場の毎日で、すでに始まっているのかもしれない。
EMPORIO ARMANI 2026-27年秋冬コレクション
“キリッとした気持ちになるというか、身が引き締まる”
今季のコレクションは、ツイードやヘリンボーンといった英国の伝統素材を背骨に、洗いざらしのデニムやクリーンな白シャツを織り交ぜた構成だ。
この日の関水は、ノースリーブのブラウスに、モヘア調のジャケットとハイウエストのミニスカートを合わせて纏った。カメラの前に立つと、ものの数分で人物像ができあがっていく。学生のようなガーリーな表情から、寄りのカットでは妖艶な女性へ。撮影を終えたばかりの本人に、まず今日の衣装から聞いた。

俳優の関水渚は、自分の強みを「真面目なところ」と言い切る。神奈川県出身、1998年生まれ。2019年、映画『町田くんの世界』で1,000人を超えるオーディションを勝ち抜いてヒロインに抜擢され、映画初主演にして新人賞を四つ受賞した。以来ドラマ・映画でヒロインや主演を重ね、2026年夏にスタートした連続ドラマ『今夜もシリアルキラーと待ち合わせ』では、ヒロインの黒井ヒナタを演じている。
――撮影、お疲れさまでした。今日の衣装、袖を通してみていかがでしたか。
「全部本当に可愛いんですけど、特にジャケットは、おしゃれなのに着心地がすごく良くて。肌に触れない部分まで触り心地が良くて、めっちゃ気持ちいいんですよ。秋に着られたらすごくいいなと思いました。着ると、キリッとした気持ちになるというか、身が引き締まるというか。おしゃれな人間になれた気がして、自信が湧きますよね」
――ミラノコレクションを頂点とする、モードの世界の空気でしょうか。
「多分そうなんでしょうね。デザインをするチームの方たち、縫って仕上げる職人の方たち、洋服作りにはたくさんの方が関わっていて、皆さんめちゃくちゃ真剣に作られてるじゃないですか。ものすごくストイックだと思うし、厳しい世界だと思うので、それをいい意味で感じられるというか、いいパワーをもらえる感じがします」
――アルマーニとは、2025年6月の銀座の新店オープンでも接点がありました。
「本当におしゃれで、空間から、階段の作りから、内装までこだわられていて、建物自体がかっこよかったんです。商品の並べ方にも高級感があふれていて、一つ一つを際立たせる並びになっているんですよ。まだ皆さんが足を踏み入れられていないときに特別にお邪魔させていただいて、あんな機会はないですから、本当に楽しかったです」
――関水さんにとって、ファッションはどういう存在ですか。
「TPOは気にしつつ、やっぱり気分が本当に変わるじゃないですか。持っているのは自分の好きなお洋服だけなんですけど、お気に入りを着ると気分が上がるし、丁寧に扱いたいし、丁寧に選びたいなって思います。誰に会うのかもすごく考えますし、どこに行くのかでもまったく変わりますよね。この友達にこれを見せたら褒められそうだなとか。ちゃんとした格好をすればスイッチが入るし、ちょっとやんちゃな格好をしたら、そういう気分で遊びに行ける。お洋服で、気持ちって全然変わるんです」
“ヒナタが入って、そのヒナタがさらに演じている”
――『今夜もシリアルキラーと待ち合わせ』では、演じるヒナタの衣装が毎回がらりと変わります。服は、お芝居を変えますか。
「変わりますね。最初に監督から、ヒナタは大変な役だけど、洋服は戦闘服みたいな意味でこだわっていきたい、と聞いていて。だからヒナタとして自前の服を着ているときは、等身大の女の子よりも気持ちを強く持っていよう、という感じになります。潜入でコスプレのような格好をするときは、普通の女の子がバイトになりきったお芝居をする。ヒナタが入って、そのヒナタがさらに演じている、みたいな。むずっ!って思いながらやってます(笑)」
――役に引っ張られて、ご自身の買い物が変わることもありますか。
「あります。ヒナタがミニスカートをたくさん持っている役なので、私も久しぶりにミニスカートを買ったんです。緑っぽいチェック柄で、この役をやる前だったら手を出さなかったもの。いつも衣装で着ていたから染みついたのか、しっくりきて、結構気に入っています。履くと、20歳ぐらいになった気分で元気になりますね」

――今季のテーマは「マエストロ」、自分の人生を指揮する人です。関水さんに、自分自身を指揮している感覚はありますか。
「あると思います。周りを引っ張っていくよりも、プレイヤーとして、自分自身を指揮するほうが性に合っているというか。主演のような立場をいただくと、プレッシャーにはなりますが、プレッシャーになるようなことを任せていただけるのは、すごくありがたいことですよね。自分がカメラに映る時間が長いときに、皆さんが本気で楽しく撮影してくださっていると、すごく嬉しいです」
“とにかく、一生懸命やるしかない”
――俳優のお仕事のなかで、「ここは誰にも譲らない」と言える一点はどこでしょう。
「当たり前かもしれないんですけど、真面目なところですね。撮影の技術スタッフさんたちの仕事って、本当にプロフェッショナルで、絶対にミスをしないんですよ。いつも驚かされるし、尊敬しています。皆さんが完璧に準備をしてくださっているなかで、演じる私が簡単なミスをするわけにはいかない。だから、皆さんのプロフェッショナルな仕事に相応しい自分でいられるように、っていつも意識しています。
何年かやってきて、お芝居って簡単にうまくいくものじゃないし、上手い人はいくらでもいるって感じていて。先輩を見ていると、気が遠くなるくらい上手かったりするんです。だから、とにかく一生懸命やるしかないなって、だんだん強く思うようになりました」
――最後に、俳優としてこれから目指すものを教えてください。
「いろんな役をやりたいです。人って、表面の話を聞いただけではわからないじゃないですか。脚本や原作を読んで、そこでやっとわかる。人の数だけ人生があって、その中をちょっとやらせてもらえるのが、俳優をやるまでは感じたことのない楽しさで。だから貪欲に、数えきれないぐらいの人生を演じたいです。そのためには、その役をいただけるように、目の前の一個一個を頑張らないといけないんですけど」

最後に印象に残った話をひとつ。高校生のころ、テスト期間が嫌だと父にこぼしたら「大人になると毎日がテスト期間なんだ」と返されたという。「本当にそうで、社会人ってすごく見られてるし毎日評価されてる。だから毎日一生懸命やりたいですね」。デビューから7年。自分の人生の指揮を自分で執る人に、”Maestro”の服はよく似合う。

関水渚(せきみず・なぎさ) 1998年6月5日生まれ、神奈川県出身。2019年、映画『町田くんの世界』でヒロインを務め映画初主演、ブルーリボン賞新人賞ほか新人賞を四つ受賞。以後ドラマ・映画で活躍し、2026年夏スタートの連続ドラマ『今夜もシリアルキラーと待ち合わせ』(カンテレ・フジテレビ系)でヒロイン・黒井ヒナタを演じている。
Photographer : Tetsuya Maehara
Styling : Takashi Tokunaga
Hair & Make-up : Sayoko Yoshizaki
Interviewer : Tsuzumi Aoyama
