マエストロ。エンポリオ アルマーニが2026-27年秋冬コレクション”Maestro”で描いたランウェイの舞台は、指揮者を目指す学生たちが集う音楽学校。道を究めた人への敬意とともに、自分の人生の指揮を自分の手で執ろうとする人の姿が、そこに重ねられている。
2025年9月のメジャーデビューから1年、2026年9月9日にメジャー1stフルアルバム『世界が変わる時』を出したばかりの、大阪を拠点に活動する4ピースバンド、ハク。その指揮は、ライブハウスのステージで、すでに始まっているのかもしれない。
EMPORIO ARMANI 2026-27年秋冬コレクション
“着ている自分が楽しくて、表現の仕方を一つ見つけた”
今季のコレクションは、ツイードやヘリンボーンといった英国の伝統素材を背骨に、洗いざらしのデニムやクリーンな白シャツを織り交ぜた構成だ。
ファッションの仕事は、4人ともほとんど初めてだった。撮影を終えたばかりのメンバーに、まず今日の装いから聞いた。

ハク。は2019年、大阪で結成。あい(Gt & Vo)、なずな(Gt)、カノ(Ba & Cho)、まゆ(Dr)。二つの高校の同級生ペア2組が初対面のまま組んだ4人で、バンド名は「何色にも染まらないでいようぜ」の白から取った。全曲の作詞作曲をあいが手がける。バンドとして、Spotify「RADAR: Early Noise 2026」とFender Next 2026に選ばれた。
――撮影、お疲れさまでした。今日の衣装で、どんな気持ちでカメラの前に立っていましたか。
なずな「やる前はすごく緊張していました。経験がなかったので。でも、やり始めたらカメラマンさんがすごくやりやすい雰囲気にしてくれて、どんどん楽しくなっていきました」
カノ「私は、こういうことが結構好きなんだなという発見がありました。やっていくうちに、着ている自分が楽しくて、表現の仕方を一つ見つけた感じがしました」
あい「自分もこういうものを醸し出せるんだなとか、知らなかったことを知れた一日でした。自分の顔にコンプレックスがあったとしても、そこを気にしなくていられるというか、最大限に自分をガッと出せる感じがして嬉しかったです。肯定できそうな気持ちになる写真やなと思いました」
――お互いの写真をモニターで見て、どうでしたか。

まゆ「あいはアンニュイな感じがすごくて、さすがって感じでした。なずなは、あんなくるくるヘアをあんまり見たことがなかったから嬉しかったし、見たことない表情をしていて、かっこよかったです」
なずな「ヘアメイクさんにも『この中やったら一番大人っぽい、かっこいい感じになれる』って言われて。そんなん言われたことがなくて、新しい発見でした」
――撮影の合間、モニターに映ったまゆさんの写真を見て、皆さんから「指揮者」という言葉が出ましたね。どこがそう見えたんですか。
カノ「まゆは普段パワフルなドラムを叩いているんですけど、今日はまた一味違う表情で、余裕があって。周りを見渡しているような感じで、一番アンサンブルを奏でてくれそうな雰囲気が出ていました」
なずな「確かに、ライブでカウントを出してくれるのもまゆなので。まゆが指揮者ですね」
――4人並んだ写真が出たときには、誰からともなく「ハク。やん」という声も上がりました。どのあたりがハク。だと感じたんですか?
なずな「私らはあいちゃんのことを見ていて、まゆだけ全然違うところを見ていたんです。4人でいるとき、たまにそういう瞬間があって。すごいハク。でした」
“いつからか、友達ではなくなりました”
――初対面の4人がバンドを組んで、だんだんハク。になっていった。珍しい経緯で結成したバンドがハク。ですが、バンドになる過程で、みなさんの関係はどのように変化しましたか?
あい「たとえばまゆに『もうちょっとこうしたほうが歌が飛ぶと思う』とか、気を遣いながらだけど言えるようになった瞬間に、自分のなかでギアが噛み合った感じがしました。それを受け入れて、次にはきちんと形にしてくれる。その積み重ねから信頼関係が生まれていったような気がします」
カノ「いつからか、友達ではなくなりました。友達なんですけど、仕事仲間という意識のほうが大きくなって。友達やからこそ割り切れるところもあるけど、同じところを目指すなら、割り切ってはいけない部分がめっちゃある。
同じものに対して『これは嫌』『これはいいよね』と共感できることが増えてきて、『これ楽しそうやからやってみよう』に『えー』って言うことが、ちょっとずつ減ってきた。一周回って、友達としても仲良くなってきた、不思議な関係です」
――さきほど「指揮者」とみなさんに言われたまゆさんは、ドラムの席から3人の背中を見ている立場ですよね。ハク。が「バンドだな」と思えた瞬間はありましたか?
まゆ「ライブをしていて、みんなが楽しそうにしている瞬間にグッと来たことがあります。背中しか見えないのに、なんとなく表情がわかったんです。そのときに、バンドやな、楽しいなと思いました」
――2026年10月からは、3か月で15か所を回るメジャー1stフルアルバムを携えた全国ワンマンツアーが始まります。どう受け止めていますか。
カノ「自分がライブをやっている意味をもっとちゃんと考えたいと思っています。自分がどこに向けて、どういう気持ちでやっているのか、1時間のライブのあいだに、めっちゃ見失うんですよ。私は特に、エネルギーを出すことに集中しすぎて、受け取ることを忘れてしまうから。
行ったことのない場所には、会ったことのない人がたくさんいる。みんなのエネルギーをちゃんと受け取って帰りたい。1月の最終公演はZepp Shinjukuで、今までで一番大きい会場なので、そこでは、ツアーで得たものを表現できるように、ひとつひとつのライブをしていきたいと、個人的には考えています」
あい「私はいつも反省点ばかりが見えてしまって、数年前にはライブが終わってから楽屋裏でしんどすぎて全然しゃべらなかったり、泣きそうになったり、そんなことばかりでした。そんなとき、メンバーが『じゃあ次はこうしよう』と解決に持っていってくれて、ちょっとずつ前に進めて、ここまで来ることができた。今回のツアーではドシッと決めていきたいです」
“4人が一致する『楽しい』をもっと増やしていきたい”
――今シーズンのエンポリオ アルマーニのテーマ「マエストロ」には、道を究めた巨匠だけでなく、自分の意思で道を選び、そこへ向かっている途中の人、という意味が込められています。ハク。として、これから先をどう考えていますか。
カノ「自由にやりたいとは思うけれど、現状、自由にできていない部分も全然あって。でも、4人が一致する『楽しい』をもっと増やしていけたら、ハク。はもっと大きくなると思っています。
4人とも好きなものも服装も違いすぎるので、めちゃくちゃカルチャーを持っているバンドには絶対になれるんです。スタイリストさんが入っていないときは衣装も自分たちで決めているので、こういうのをやっていこう、と積極的に言うようにしています」
あい「曲を作るときも、最初はデモの段階で、これ弾けるかな、やってくれるかなと心配して、自分で止めていたんです。なんでそんなふうに思っていたんだろうと今は思うんですけど、一回そこを乗り越えたら、ライブでどう表現するかまで含めて、自分の好きな色に、ビビッとくるものを作れるようになった。そういうものを増やしていきたい」
なずな「練習や復習をやっていないと不安になって、それがメンタルに出てしまうんです。だから、やったという事実が自分にはすごく大事で、昨日やったから大丈夫、と思える。練習はめっちゃ楽しいですし、そのためではないけど、後々それが自信につながっているなと思います。これからも、もっと技術を磨いていきたいです」
まゆ「ツアーでは、これだけの本数を回るのは初めてなので、気づくことがめちゃくちゃ多いと思います。自分の弱いところも見えるだろうし、逆にやっていくなかで得意やなと思う部分や、もっと伸ばしていける部分も見つかると思う。ツアーが終わる頃には自分で形にしておきたいですし、そういうことの繰り返しなのかなと思っています」
――最後に。これから初めて出会う人たちに、どんなハク。を見せたいですか。
あい「みんなが一緒に楽しむ一体感もめっちゃ嬉しいんですけど、どちらかというと、曲が空気のベールみたいに、ふわーって人の体に染み込むようなイメージを持っているんです。たまたま見たとか、名前を知っているから見てみたという人でも、そんな人の感情を動かすようなライブができたら理想です。こっちが『いけた!』と思ってもどう届いているかはわからないけど、そういうバンドで根本はありたいなと思います」
「汗をかかないときって、マジでかかないんで。それって、出せていないエネルギーが多いということなので、全公演、ぶっ倒れたほうがいいかなって」。この3か月を終えたときにどうなっていたいかを聞くと、カノはそう答えた。
ツアーの初日は10月30日、千葉LOOK。自分の人生の指揮を自分で執る人に、”Maestro”の服はよく似合う。

■ プロフィール
ハク。
2019年結成、大阪を中心に活動する4ピースバンド。あい(Gt & Vo)、なずな(Gt)、カノ(Ba & Cho)、まゆ(Dr)。全曲の作詞作曲をあいが手がける。2021年、関西最大の十代才能発掘プロジェクト「十代白書2021」でグランプリを獲得。2025年9月、「それしか言えない」でメジャーデビュー。2026年にはSpotify「RADAR: Early Noise 2026」、Fender Next 2026に選出された。8月9日の「ハク。の日」には、いま一緒にやりたい相手を招く自主企画を開催している。2026年は8月9日に大阪・心斎橋BIGCAT(ゲスト:Homecomings)、8月18日には初の東京編を恵比寿LIQUIDROOM(ゲスト:ストレイテナー)で行った。9月9日、メジャー1stフルアルバム『世界が変わる時』をリリース。10月30日から2027年1月31日にかけて全国15か所を回るワンマンツアー“みんなの世界が変わる時ツアー”を開催し、ファイナルはバンド史上最大規模となるZepp Shinjuku (TOKYO)公演。
■ リリース情報
ハク。『世界が変わる時』
2026年9月9日リリース/メジャー1stフルアルバム(全14曲)
photographer : Seiya Fujii
styling : Masahiro Hiramatsu
hair : Kurushima
make-up : Mio Iguchi
interviewer : Tsuzumi Aoyama




